Container Registry
最終更新日: 2026 年 9 月 11 日
はじめに
コンテナレジストリは Kubernetes エコシステムの基盤となるコンポーネントです。コンテナイメージを保存、管理、配布するための一元的なリポジトリとして機能します。CI/CD パイプラインと Kubernetes クラスタをつなぎ、ワークロードにイメージを確実かつ安全に届けます。
コンテナレジストリには、次の機能があります。
- イメージストレージ: タグでバージョン管理するコンテナイメージの永続ストレージ
- アクセス制御: イメージをプッシュ/プルできるユーザーを制御する認証と認可の仕組み
- セキュリティスキャン: デプロイ前にコンテナイメージの脆弱性を検出する
- 配布: コンテナランタイムへの効率的なイメージレイヤーのキャッシュと配布
- ライフサイクル管理: ストレージを最適化するためのクリーンアップと保持ポリシーの自動化
レジストリの比較
| 機能 | Docker Hub | Amazon ECR | Harbor |
|---|---|---|---|
| 種類 | SaaS(パブリッククラウド) | AWS マネージドサービス | セルフホスト(CNCF) |
| 料金モデル | 個人向け+有料サブスクリプション | 使用量ベース | インフラ、運用、バックアップ |
| プライベートリポジトリ | 個人向け: 1 件。有料プランには利用枠あり | サービスクォータが適用される | Operator でクォータを設定 |
| パブリックリポジトリ | プランのポリシーに応じて利用可能 | ECR Public。無料利用枠と従量課金あり | 対応 |
| ストレージ料金 | プランによる | リージョン/ストレージクラスごとの料金 | 自己管理 |
| データ転送 | 使用量と公正利用ポリシーによる | 宛先/リージョンに応じて課金 | 自己管理 |
| 脆弱性スキャン | Docker Scout のプラン利用枠 | Basic / Enhanced(Inspector) | Trivy 統合 |
| イメージ署名 | DCT または別の OCI 署名ツール | AWS Signer によるマネージド/手動署名 | Cosign/Notation |
| レプリケーション | 利用不可 | リージョン間レプリケーション | Pull/Push レプリケーション |
| RBAC | 組織レベル | IAM ポリシー | プロジェクトレベルのロール |
| 完全に切断された環境での運用 | Hub への接続が必要 | AWS への接続が必要。VPC エンドポイントでプライベートアクセスを提供 | イメージ、スキャナーデータベース、インストール依存関係をインポート |
| レート制限 | アカウントごとのプル制限と公正利用ポリシー | API ごとのサービスクォータ | Operator の制限とインフラ容量 |
| 統合 | 汎用 | AWS ネイティブ(EKS、IAM) | Kubernetes ネイティブ |
| コンプライアンス | サービスの最新の認証と適用範囲を確認 | AWS サービス/リージョンの適格性と自社の管理策を確認 | 管理策と証跡の責任は Operator にある |
ECR にはリクエストレートやリポジトリの制限を含むサービスクォータがあります。AWS Signer の統合に対応していますが、署名の保存とデプロイ時の検証強制は別途構成が必要です。Docker Hub については、過去のプル上限を普遍的なものとして扱わず、現行の利用ポリシーとレスポンスヘッダーを確認してください。
詳細な比較
Docker Hub
最適な用途: オープンソースプロジェクト、開発環境、手早くセットアップしたいチーム
利点:
- 最大規模の公開イメージライブラリ(Official Images、Verified Publishers)
- インフラ管理が不要
- Docker CLI と簡単に統合できる
- GitHub Actions/GitLab CI など外部 CI を使ったビルドとプッシュの自動化。Hub ネイティブの Automated Builds は非推奨
欠点:
- アカウントごとのプル制限と公正利用/不正利用対策
- 無料プランではプライベートリポジトリのストレージが限られる
- AWS/Kubernetes とのネイティブ統合がない
- 公開イメージにはサプライチェーンセキュリティ上の懸念があり得る
料金: 現行の料金ページで、ユーザー数、月払い/年払い、含まれる Scout/build の利用枠を比較してください。過去の Pro 月額 $5、Team 月額 $9、日次のプル利用枠は、現在の料金基準ではありません。
Amazon ECR
最適な用途: AWS ネイティブのワークロード、EKS クラスタ、コンプライアンスを必要とする企業
利点:
- EKS ノードと Fargate の実行ロールとの統合。ワークロードの IRSA/Pod Identity 権限は、イメージ取得用の認証情報とは別
- IAM ベースのアクセス制御と調整可能な API サービスクォータ
- リージョン間レプリケーション
- Amazon Inspector による Enhanced scanning
- プライベートな AWS 接続を可能にする VPC エンドポイント。完全に切断されたエアギャップではない
- 従量課金(初期契約不要)
欠点:
- AWS ベンダーロックイン
- 大規模なイメージライブラリではコストが積み上がることがある
- ライフサイクルポリシーの構文が複雑
- クロスアカウントアクセスには慎重な IAM 構成が必要
料金: 保存データ量に該当するリージョン/ストレージクラスの単価を掛け、転送、Inspector、AWS Signer、VPC エンドポイントの料金も考慮してください。公式例の $0.10/GB-month では、100GB のストレージ料金だけで月額 $10 です。対応する AWS コンピューティングサービスへの同一リージョン転送は、インターネット経由やリージョン間のトラフィックとは異なります。実際の経路に応じた料金はECR の料金ページを確認してください。
Harbor
最適な用途: オンプレミス、エアギャップ環境、マルチクラウド、コンプライアンス要件が厳しい業界
利点:
- データとインフラを完全に制御できる
- ベンダーロックインがない
- 豊富な機能(レプリケーション、スキャン、署名、RBAC)
- CNCF の Graduated プロジェクトで、強力なコミュニティがある
- 規制の厳しい業界(金融、医療、政府機関)に適している
欠点:
- 運用負荷(デプロイ、アップグレード、バックアップ)
- インフラへの投資が必要
- 管理に習熟するまで時間がかかる
- 高可用性構成が複雑
料金: ライセンス料金はありません。インフラ費用はデプロイ構成によって異なります。
- Kubernetes クラスタのリソース(CPU、メモリ、ストレージ)
- 永続ストレージ(データベース、レジストリストレージ)
- ネットワーク/ロードバランサーの料金
選択基準
次の要素を基に、コンテナレジストリを選択してください。
1. インフラ環境
| 環境 | 推奨レジストリ |
|---|---|
| AWS ネイティブ(EKS) | Amazon ECR |
| マルチクラウド/ハイブリッド | Harbor |
| 開発/オープンソース | Docker Hub |
| エアギャップ/切断環境 | Harbor |
| エッジ/IoT | Harbor(レプリケーションを使用) |
2. セキュリティとコンプライアンスの要件
アクセス制御、認証情報の有効期間、脆弱性スキャン、ダイジェスト固定、署名検証、ネットワーク境界、復旧手順を比較してください。セルフホストであることや、上位のサブスクリプションを使っていることだけで、自動的に安全性が高まるわけではありません。サービスがコンプライアンスの対象となることも、必要な管理策がなければワークロードの準拠を意味しません。
- AWS の要件: 対象リージョンとコンプライアンス範囲で ECR が適格か確認します。
- データ主権または切断環境での運用: Harbor はデプロイを制御できますが、パッチ適用、バックアップ、証跡収集は Operator が担います。
- マネージドなコラボレーション: Docker Hub の実際のプラン機能を、チームが必要とする管理策と比較します。
3. チームの規模と予算
- 小規模チーム、予算が限られている: Docker Hub Free/Pro
- AWS を利用する成長中のチーム: Amazon ECR(従量課金)
- 専任のプラットフォームチームがいる企業: Harbor
4. 運用上の希望
- 完全マネージド、運用作業を最小限にする: Docker Hub または Amazon ECR
- 完全な制御とカスタマイズ: Harbor
このセクションの内容
このセクションでは、コンテナレジストリの概念と実装を詳しく扱います。
- Docker Hub - パブリックレジストリの使用方法、レート制限、Kubernetes 統合
- Amazon ECR - ライフサイクルポリシーと EKS 統合を備えた AWS ネイティブレジストリ
- Harbor - CNCF Graduated のセルフホスト型エンタープライズレジストリ
- ベストプラクティス - セキュリティ、コスト、運用のためのレジストリ横断戦略
クイックスタートの判断ツリー
まとめ
コンテナレジストリは、デプロイの信頼性、セキュリティ態勢、運用コストに直接影響する重要なインフラです。Docker Hub は最も手軽に始められ、Amazon ECR は AWS との統合が最も強く、Harbor は複雑なエンタープライズ要件に対して最大限の制御と柔軟性を提供します。
このセクションの各ドキュメントでは、それぞれのレジストリを実装する方法を詳しく説明します。選択したソリューションを最大限に活用してください。

